『育てるよろこび』

去年の今ごろ、省エネ目的に我が家で初めてグリーンカーテンを試みた。

インターネットで下調べをして、ホームセンターでプランター2つと
ネットと棒、そして、ゴーヤ6本と土を購入して南窓の下に植えてみた。

すると、日を追うごとにみるみる成長してネットにしがみつきながら、
伸びていき、葉が広がっていった。

そして、窓の半分くらいの背丈になったところで、黄色い花を咲かせて
ついに実がなり、その実がどんどん大きくなり、気が付くと他にも実が
なり始めていた。

いつの間にか、ゴーヤが我が家の楽しい話題の一つになっていた。
そして、初の収穫…喜びの裏側で、福島原発事故のため、放射線量が
気になる。念のため、放射線量を測定してみた。幸い安全が確認できた。

さっそくゴーヤチャンプルーや天ぷらを作り、おいしくいただいた。
自分で育てた作物をいただく…命をいただくことへのありがたみと、
人間の本質的な生きる喜びを感じる瞬間だった。

こんな当たり前の幸せを、福島原発事故で一瞬にして奪われた方々の
怒りと無念さを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
米沢に避難してきて、畑仕事をしている方が収穫した野菜を私にまで
本当にうれしそうにおすそ分けして下さる。何かお返しをしたいと
思い、笹巻きを作って食べていただいた。心が通い合っているように
感じた。

今年は、もっとおすそ分けで心を通わせたいと思い、南側に小さな畑を
作り、ナス2本、ピーマン2本、トマト4本を植えた。そして、グリーンカーテンは、
キュウリ2本とゴーヤ2本を植え、裏の畑には、ヤーコンとトウモロコシと
インゲン豆を植えた。キュウリはすでに3本収穫し、野菜嫌いの息子も
「おいしい!」と言いながらもぐもぐ食べた。

朝、水をやったり、トマトの脇芽をかいたり、葉についた虫をチェックしたり、
細かいところまで気を付けて大切に育てていると、いつの間にか愛着もわいてくる。
大変だけれど、癒され、ストレス解消にもなっている。

宇宙へ人類が旅立つとき、人間にとって一番のストレスとなるのは地球から離れ、
広大な宇宙に孤立する不安だそうだ。その一番の薬は、植物を育てることだという。
宇宙船の中に、土に触れながら植物を育てることができるリサイクルシステムを
設置するという。そこで、クルーとコミュニケーションを図りながら互いに
心を通わせ、絆を深めていく。自分と同じであることを求めるのではなく、
他人の違うところを認め合い、歩み寄る。まさに、九里学園の教育スローガン
『協同和楽』である。

人間が幸せな人生を送るために必要なものの本質を感じる。

教育職に就いて、気が付けば今年で13年目となる。

当然のことだが、人間を育てるということは、植物を育てるより何倍も難しい。
しかし、それだけに成長した姿を見ることは、何倍もうれしい。

先日、卒業生の結婚式に呼んでいただいた。たくさんの教え子が出席していた。
皆、それぞれに苦労しながらも、たくましく成長していた。

今日、メガネの修理に眼鏡店に行ったら、2人の卒業生が働いていた。
いたるところで卒業生たちの活躍が見られることは幸せなことだと思った。

野菜作りも、教育も『育てるよろこび』があり、やめられない生きがいであると感じた。

明日の同窓会総会が楽しみである。

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