準備期間
令和3年11月12日(金)5・6時間 / 11月17日(水)1・2時間 / 11月19日(金)5・6時間 / 11月26日(金)5・6時間
講師:芝浦工業大学教授 栗島英明氏 尚絅学院大学名誉教授 森田明彦氏
事前準備内容
10月に芝浦工業大学の栗島英明教授を講師に迎え、「おきたま脱炭素 未来ワークショップ」を開催。ワークショップの中で、地球温暖化について学んだ後、気候変動がどのように置賜地方に影響しているかを調べて発表した。また、置賜カーボンニュートラルシュミレーターを使って、カーボンニュートラルを実行する難しさを学んできた。ワークショップの中で学んだことを活かし、国際レベルで環境問題を考えるために、COP27の予備会議という設定で、今回の模擬国連を開催した。生徒は25か国に分かれて、グラスゴーで開催されたCOP26の決議事項などを踏まえながら、それぞれの国の大使として準備を進めた。
模擬国連当日
模擬国連には、尚絅学院大学名誉教授 森田明彦氏を迎えて、生徒の取り組みを見ていただいた。スピーチの場では、中国、アメリカ、フィジーやツバルなどの島国連合などから提案が出され。4回の非着席コーカス(アンモデ)の中で、自国の提案に賛同を得られるように、大使として様々な国との交渉を進めた。最終提案では、すべての国に加盟してもらうカーボンニュートラル委員会設置の提案が中国から出された。今回は全会一致での可決となるため、中国の提案は否決となった。講師からの講評をいただき、生徒たちも振り返りをしながら、模擬国連での学びを深めた。
【生徒の振り返り】
設問 1 当日までの準備の中で学んだこと、発見したこと、気づいた点、感じたことなどあれば教えてください。
- 自分が担当したインドネシアでは気候変動の影響で都市が水没するかもしれないので、解決すべき問題だと実感した
- 二酸化炭素を出していない国が他の先進国が出した二酸化炭素排出によっての地球温暖化に悩まされている
- 今回担当したオーストラリアは石炭が最大のエネルギーだが再生可能エネルギー100%を目指す、といったエネルギー政策に積極的な国だった。また多くのCO2の削減を見込めており、その背景には進んだ低排出技術、研究機関や企業との連携、国民の理解がある事がわかった。
- ドイツは環境問題に対して積極的に対策を行っているのを知った。緑化や、原子力発電の廃止を積極的に進めていて、環境問題に対して国民一人一人の意識が高く、進んでいる。
- 前回はクゥエートという途上国で、何かしらの情報を手に入れるのが難しい国だった。今回のコップ26の議長国であるイギリスは、とても興味深いと実感でた。
- インドの担当だったが、インドは人口が多く、医療が発達していると聞いたことがあったので、お金を持っているというイメージだった。調べてみると、国民一人あたりのGDPが低く、合計のGDPも中国の半分以下という結果で、とても驚き、これは問題だと思った。
- 環境問題では自国が推進しているエネルギー開発方法が他国では推進していなく、その国へのアプローチの仕方を考えるのが難しかった。原子力発電は反対している日本の政策を調べてみると,どこの国よりも対策をしており、やはり被害にあったことで、対策や政策は重視されていると感じた。フランスは技術が進んでいて宇宙などの分野でも活躍していた。
- 日本を担当した。調べていく中で日本は気候変動対策に消極的に感じた。日本政府は温室効果ガス削減目標を表明したが、日本の地理的要因などにより対策を実行するまでに至っていないことが他国から消極的に見られてしまう原因だと思った。大企業が様々な対策を試みたり、研究しているので企業間の連携と、企業と政府の連携をもっと図るべきだ。
- ロシアを担当。大統領が会議を欠席して他の国からバッシングを受けたり、政策に署名したものの行動していないなど、被害を受けていても真剣に考えていないことに驚いた。
- 島国などの海面が上昇して難民になるだけでなく、大きな災害が起きてしまい、災害難民になってしまうことがわかった。また、様々な場所で、グリーン水素の開発が進んでいて技術の進歩にとても驚いた。
- ノルウェーは環境問題に一生懸命に取り組んでいる国だが、深く調べてみると完璧とも言えない部分もあった。全ての自動車をEV車に切り替える取り組みをおこなっているが、一次産業が盛んなノルウェーとしては他国にはEV車に切り替えて欲しくない部分もあり、環境を良くしたい思いは強くても自国の利益を考えるとそう簡単にいかないと思った。
- 気候変動に置いて、カーボンニュートラルの達成は、通過点であり、最も重要なのは、この問題によって危機に瀕している国や人々を助けるためにできることは何かという点だと思った。
- サウジアラビアを担当。多くの再生可能エネルギーを推進しており、さらには潤沢な資金を持っているにも関わらず、環境問題に対して国民が意欲的でないことから、各国が政策を行おうとしても活動する事が出来ない。
- 中国を担当。膨大な情報量から有効なものを抜粋することが難しかった。政策立案で公平性・資金面・利益を網羅することが本当に困難だった。考え抜いたことで、COP26のリアルを感じられた。
設問 2 当日の模擬国連の中で学んだこと、発見したこと、気づいた点、感じたことなどあれば教えてください。
- 各国同士の歴史的背景も踏まえながら議論していくのがとても難しい。環境問題という議題でも、資金、経済問題や、難民問題など様々な課題も頭に入れて話を進めていくのも難しかった。自国としてはどの国の提案が1番利益となるのか、見分けることも大切だと感じた。
- アメリカのCCSの提案から、途上国とのお金での取引は実際に可能なのか、途上国に売るために今よりエネルギーの生産量を増やす必要があるのかなど、一見良い案だと思っても疑問や問題点を見つけ出す事ができた。今回の環境問題は前回と比べて国益と国際益の両立は簡単なものではないと痛感させられた。
- それぞれが自国の大使館になり切ってしっかり考えて行動していた。モロッコは途上国で、全ての提案が途上国に配慮してあり良いと思ったが、話を深めていくと公平性や経済的な問題などが分かってきて、自国のためにきちんと見極めないといけないと思った。
- 政策の内容に具体性が出てくると各国の立場からの主張も増えてきて、決めるのが難しくなる。炭素税を資金として使うメリットが分からず質問したことで学べた。今回はフランスとしての意見と自分自身の意見が混じってしまい、その国の大使になりきることの難しさを感じた。
- 今回の模擬国連は食料問題の時とは違い、全会一致で決定なのでとても難しかった。一部の国だけではなく他の国にも利益があるように政策や枠組みを考えるのは大変な事だとわかった。お金の問題、国ごと公平であること、実効性が大事になってくることを学んだ。地球温暖化を止めるために二酸化炭素排出量は減らさなければならないが、自分たちの利益も考えるとなかなか賛成できなかった。
- 今回の模擬国連では米中の対立が目立った。両国とも世界のトップに立つことを目的とした対策を考えていて、これが現状だと思った。何より大切な事は今すぐに危機に瀕している人たちを救う事であり、これを島国の人や私たちのような学生が訴えていくべきだ。
- 他国から素晴らしい提言がいくつも挙げられそれを中国でうまくまとめたように思われたが、自国の利益などを考えた場合そう簡単には賛成することができないことを実感した。今回の模擬国連ではいつもよりレベルの高い話し合いを行えた。
- 今回の模擬国連は、全会一致が条件だったため、二国間関係以上に多くの国が交わった。開発途上国や島国連合へのアプローチをしながら、自国の利益を考えなければならなかったため、経済や政治などが絡む中で、公平な議論をすることがいかに難しいのかを実感した。また、担当国であるフランスやドイツなどのEUが連携して動いていたらまた違っていたと感じつつ、提案を絞る中で提案すれば、さらに困難状態に陥るのではないかと考え、提案をしなかった。
- 今回の環境問題の模擬国連で、全会一致制だったためとても難しかった。特に、中国側の意見に対して発展途上国の「炭素税は炭素が排出される上で成り立つ」といった意見はその国の危機的状況からもそういった点に目をつけ、話を展開させることが出来た。
- 大きな組織になればなるほど複雑化し、可決に至るにはすべての国に理解してもらわなければならないから説明に時間が取られてしまった。ただ、方向性を一致させ、具体的で現実的な議論をすることができた。
- 今回提案した国では、キャップ・アンド・リリースが用いられた提案が多くあった。加盟国から徴収された税で支援すべき国が本当に豊かになるのか疑問である。そして徴収をされた国はどこから国益になる恩恵を受けるのか。国ごとに良い提案があったが、加盟国と支援を受ける国がどのように協力して脱炭素などに貢献できるのかが重要だと考えた。
- 今回の模擬国連で「公平性」という言葉が1番印象的だった。状況や価値観が違う国が入り交じる中で、1つの提案に絞ることは、正直に言えば、不可能なのではないかと考えてしまう。しかし、モルディブやツバルなどのように「明日、住む場所がなくなる」死と隣り合わせの状況下にある国を放っておくことはできない。だから、残りわずかしかない時間の中で、各国が何かに取り組む必要があると感じた。
コメントを投稿するにはログインしてください。